月の見える窓

作者:新野剛志|双葉文庫
晶彦は新宿で義弟の健二と共にキャバクラのスカウトマンをしている。
ある日、晶彦がスカウトしたキャバ譲の麻衣が、幼い息子を残して失踪してしまう。
息子のために麻衣を探しはじめた晶彦は、白石という老人に出会う。
白石は妻を精神異常の通り魔に殺害された過去があり、無関心な大衆に啓蒙活動を行っていた。
その近くに麻衣の常連客の江端が住んでおり、彼の息子が誘拐されるという事件が発生する。
江端は麻衣とともに、白石の妻が殺害された事件の目撃者だった。
白石と言葉を交わすにつれ、江端の息子を誘拐したのは彼ではないかと晶彦は疑う。
江端の息子は重い腎臓病を患っており、晶彦は健二と二人で救い出そうとする。
無関心が招く悲劇をベースにしたサスペンスで、登場人物が多くないのが、かえって濃密な展開になっている。
晶彦の困っている人を助けようとする性分は、無骨だが共感を覚える。
また彼の性格により、身近な人が離れていくシーンは何となく悲しい。
中だるみがあるのが少し残念だが、そこそこ面白かった。

月の見える窓 (双葉文庫)

月の見える窓 (双葉文庫)