贄の夜会(上・下)

作者:香納諒一|文春文庫
「犯罪被害者家族の集い」に参加した2人の女性が何者かに殺害される。
警視庁の大河内刑事は被害者の夫に違和感を覚える。
被害者の夫の目取真は、直後に姿を消してしまう。
さらに、被害者の集いの中に19年前に14歳の同級生を殺害した男がいたことが判明する。
この男は現在は弁護士となっており、犯行当日のアリバイは完璧だった。
目取真の捜査は、公安に妨害され、捜査は手詰まりの様相となる。
そんな大河内の前に一人の女性心理学者が現れ、中条を操っている真犯人がいると指摘する。
信念を持った刑事、孤独な殺し屋、サイコキラーの3者が入り乱れ、事件は新たな方向に向かう。
この作品は、神戸の連続児童殺傷事件や、新神戸山口組の宅見若頭が殺害された実在の事件をベースにしている。
さらに、返還前の沖縄で起きた米兵の傷害事件や、宅配業者による政界への献金疑惑も扱い、スケールの大きな作品だった。
大河内を取り巻く刑事たちの捜査や、目取真のヤクザの殺害シーンはスリル満点。
サイコパスと目取真、女性心理学者とのやり取りも不気味で緊迫感があった。
様々な要素が満ちていて、普通なら消化不良を起こしそうなのだが、ストーリーの作り方がうまかった。
飽きることなく、最後まで一気に読めた。もう少し評価されていい作家だと思う。
真犯人の描写が少し弱かったことを除けば、読み応えは満点だった。

贄の夜会 上 (文春文庫)

贄の夜会 上 (文春文庫)