雪虫 刑事・鳴沢了

作者:堂場瞬一|中公文庫

  • あらすじ

新潟県警捜査一課の鳴沢は、祖父・父と続く刑事の3代目だった。
冬が間近に迫った湯沢で老女が殺害されるという事件が発生し、捜査にあたる。
鳴沢は、被害者が50年前に解散した宗教団体の教祖であったことを突き止める。
ただ、戦後の混乱で警察にも資料は残っておらず、捜査は難航する。
その後、宗教団体の幹部も殺害され、鳴沢はかつての教団に起きた事件を知る。
県警の生き字引でもある祖父に聞くが、口は重く、捜査本部長の父は鳴沢を遠ざける。
事件の輪郭がはっきりとしない中、祖父が襲撃され、重症を負う。
過剰なまでに刑事としての正義感にこだわる鳴沢は、周囲と衝突しながらも、犯人を追い詰めていく。

  • 感想

親子三代警察勤務という設定は、佐々木譲の「警官の血」に似ている。
でも、こちらは3代目の了が主人公の警察小説だ。
了は融通が利かない刑事で、酒もたばこもやらず、ひたすら刑事の使命に燃えている。
そのことを同僚や先輩、祖父や父に指摘されても、受け入れる様子はない。
同級生の喜美恵と接近しても、結局は刑事であることにこだわり続ける。
事件の経過とその結果は平凡なものだが、読みごたえのある作品で、面白かった。
シリーズものですでに9作ほど出ているが、これが1作目。
本作は結末に後味の悪さが残るが、次作もぜひ読んでみたい。

雪虫 (中公文庫)

雪虫 (中公文庫)