鎮火報

作者:日明恵講談社文庫
二十歳の新米消防士の活躍を描いたミステリー。消防がテーマの小説は珍しい。
大山雄大は赤羽台出張所のポンプ隊に所属しているが、消防の仕事に対しては醒めていた。
雄大の父親も消防士だったが、火事の現場で殉職し、家族を省みなかった父を憎んでいた。
そんな彼を消防の仕事に導いたのは、兄弟のように育った仁藤だった。
仁藤は消防士として、数々の殊勲をたて、伝説の消防士として、有名な存在だった。
父親の後を追い、消防士となった仁藤は、雄大のことを何かと気にする。
雄大はそのことが気に入らず、何かと反発する。
消防の仕事についたのも公務員としての安定を求めたからであって、一時も早く内勤に移りたいと考えていた。
ある日、雄大の隊に出動がかかり、火事の現場に赴くが、不法滞在の外国人が住むアパートだった。
放水を始めると、水があたった部分から発火し、雄大は不審に思う。おまけに救い出した外人は死亡する。
だが、あくまで雄大は消防は一時的な仕事とドライに割り切ろうとする。
別の日、再び出動した現場も、やはり不法滞在の外国人が住むアパートだった。
現場で出くわす入国警備官や警察官に阻まれ、なかなか真相は見えてこない。
一応ミステリーだが、青春小説の趣きが強く、悪い意味ではなく、ライトノベルに近い軽さがあった。
でも、その軽さが、話のテンポを非常に良いものにしている。
また雄大の一風代わった友人達や、仲間の隊員達の描写も丁寧で、キャラが確立している。
自分のことをドライだと自認している雄大が、だんだんと熱くなっていき、話も盛り上がっていく。
続編もあるようなので、ぜひ読んでみたいと思う。

鎮火報 Fire’s Out (講談社文庫)

鎮火報 Fire’s Out (講談社文庫)