動物記

作者:新堂冬樹|角川文庫
新堂冬樹が動物を題材に、2つの中篇と1つの短編が収録された珍しい作品。
「極北の王者アダムの生涯」は、アラスカのグリスリーと日本人の交流を描いた作品。
飼い犬を交通事故で失い、傷心の小田切少年は、父に連れられ、アラスカにやってくる。
ロッジにはアダムという小熊がおり、少年はアダムと遊ぶことで癒されていく。
日本に戻った少年は成長し、テレビ番組の製作会社に勤め、やがて子を持つ親となった。
子供とすれ違いが続く日々の中、小田切は子供にアラスカの自然を見せようと考えた。
アダムは少年が去った後、人から逃げ出し、森の王者となり、「クマ王」という異名で恐れられていた。
やがて小田切と息子の俊夫は、意外な形でアダムと再会することになる。
「兄弟犬ミカエルとシーザー」は東京近郊の高原で捨てられた子犬の生涯を描いた話。
山里で捨てられたシェパードの兄弟のミカエルとシーザーは、地元でペンションを経営する五郎に拾われる。
二匹が平和な生活を過ごしたのは束の間で、やがてシーザーは宿泊客に拾われていく。
宿泊客は大きく成長したシーザーを持て余し、栃木県の山に捨ててしまう。
シーザーは野犬のリーダーになるが、野犬狩りで仲間を失い、ミカエルがいる里を目指した。
ミカエルのいる地を牛耳る巨大な野犬のリーダーを倒し、ここでもシーザーはリーダーとなった。
一方、ミカエルは五郎の下で訓練を受け、非常に優秀な猟犬に成長していた。
シーザーが率いる野犬グループを退治するため、五郎はミカエルを連れ、湿原に赴くが。
最後はプレーリードッグのファミリーを描いた短編の「大草原の穴ぐらのジョン」
プレーリードッグのジョンは、家族を守るため、いつも2足で立ち、周囲を警戒している。
コヨーテに追われ、ガラガラ蛇の襲撃を受けても、知恵を使い、やりすごす姿を描いている。
3つとも面白いのだが、これを新堂冬樹が書く必要があるのかは大いに疑問を感じた。
動物より、闇金やヤクザに窮地に追い詰められる小市民の話の方が読みたいな。

動物記 (角川文庫)

動物記 (角川文庫)