この指とまれ−GONBEN−

作者:小川勝己|実業之日本車
美貌の女子大生・椙浦夏子を中心とした大学生6人の詐欺師グループの暗躍を描いたクライムサスペンス。
バイト代の全てを貢いだ恋人を、社長令嬢の日ノ原麗華に奪われ、復讐を誓う夏子は、仲間を集め詐欺グループを結成する。
集まった仲間は、夏子の友人でスキー部に所属する歩と、歩に惚れている庸司に、父親が会社で不正を働いて逮捕された博貴。
凶暴なくせに、他にアル中になることを異常に恐れている夏樹。介護関係の仕事を志望している美代子。
キャッチバー詐欺から、ターゲットのパソコンに侵入して小金を巻き上げたり、サークルのノリで詐欺を成功させていく。
計画を立てるのは、夏子と歩、夏樹の3人で、大学生とは思えないくらい、頭は切れ、犯罪に関する知識が豊富だ。
夏子と夏樹は完全に悪党として描かれており、平凡な博貴はいつもビクつきながら、彼らに協力する。
夏子たちの犯罪は徐々にエスカレートし、ヤクザの金に手をつけ、同業の詐欺師を騙し、街の顔役を嵌める。
ヤクザ、詐欺師、顔役から警察にまで目をつけられた6人は、徐々に追い詰められていく。
テンポのいい会話とストーリーと共に、凄惨な暴力も同時に進行する。
ヤクザの拉致と言葉による脅し「片方の目玉をくりぬいて、空いた眼窩にウォッカを注ぎ込む」
金属バットで相手をぶちのめし、イチモツをナイフで切り取る。生爪をはがし、粗塩を刷り込む。
死体の身元がわからないようにするため、歯を全て抜き、ガソリンに何日か付け込んでから焼却する。
生きているうちに腎臓を抜いてしまう。クール宅急便で生首を送りつけるなど、暴力はエスカレートする。
最後まで生き残るのは誰なのか。追い詰められたグループの描写が面白いし、最後にどんでん返しもある。
軽妙なやり取りと残酷描写をミックスして、破滅型のストーリーが展開するのがこの作家の持ち味。
本作もスピード感があり、相変わらず人物造詣も面白かった。

この指とまれ  -GONBEN-

この指とまれ -GONBEN-