残虐記

作者:桐野夏生新潮文庫
女流作家の小海鳴海が、少女の頃に監禁されていた事実を記した手記を残し、失踪する。
彼女は、監禁事件の犯人から出所したという手紙を受け取っていた。
鳴海こと景子は小学4年生の時に工員のケンジに誘拐され、工場の2階に監禁される。
景子が住んでいたのは工場誘致をして、中途半端に人が流入した地方都市の団地だった。
ケンジは隣町の工場で住み込みで働いていたが、少し頭が弱く、社長や同僚からバカにされていた。
景子を誘拐したケンジは、昼食の時間になると、部屋に戻ってきて、景子を裸にして、自慰をした。
夜になるとケンジは景子と同じ小学4年生になり、他愛も無い話をして、交換日記をするようになった。
汚れた布団、薬缶越しに飲む水、黒ずんだ爪、風呂に入らない生活。
1年以上監禁生活が続くが、偶然、社長の妻に発見された景子は、周りの好奇の目に晒されるようになる。
景子はケンジから受けた被害を一切語ることはなかったが、そのことが家族の離婚へと発展する。
景子は16歳のときに自分が監禁された経験をベースに「泥のごとく」という小説を発表し、小説家となる。
監禁、暴行、解放と目まぐるしく環境が変わった少女の内面を描いた本作は、重苦しい雰囲気に満ちている。
景子の想像力の逞しさが核となっていて、暗い魅力のある話だった。

残虐記 (新潮文庫)

残虐記 (新潮文庫)