ミサイルマン

作者:平山夢明|光文社
「独白するユニバーサル横メルカトル」後の新作の短編集。期待して読んだ。
だが、インパクトは薄かったし、正直あまり面白くなかった。
病的なまでに残酷で、かつハードボイルドな作風は初めて読む人には新鮮だろう。
イカれた登場人物と、想像を超えた暴力と肉体の破壊は健在だが、本作は怖さを感じなかった。
今までにあまり書かなかったノーマルな話が多いなというのも大きな特徴だ。
なぜこの作家が書くのか疑問に思ったのは一風変わったSF小説の趣きの「テロルの創世」と、
人狼を題材にした「けだもの」、電話機に埋め尽くされた家を描いた「それでもおまえは俺のハニー」
これらの作品も悪くはないと思う。でももっとぶっ飛んだモノを求めてしまう。
「ネックサッカー・ブルース」の煮えたぎったサラダ油を浴びせられた痛みの描写。
「枷」の女性を徹底的に破壊・解体する妄想と現実。
断片的には面白いのだが、一つの話として捉えると、期待はずれだと思う。
それでも、正統派怪談の「或る彼岸の接近」とイカれた人殺しコンビの表題作は面白かった。
巻末を見ると、それぞれの作品の発表年次が古いので、これでは最新作とはいえないな。

ミサイルマン―平山夢明短編集

ミサイルマン―平山夢明短編集