どろ

作者:山本甲士|小学館文庫
些細なことがきっかけで、隣人同士が戦争状態になる話。
市役所に勤める岩室は、隣人の陰気な手原のことが気に入らなかった。
雑草が伸び放題の庭を注意したところ、犬の鎖がうるさいと逆に言われる。
最初の攻撃として、犬の糞を手原の庭に投げ込む。トラップに引っかかる手原。
ペットの葬儀店に勤める手原は隣人の目つきのおかしい岩室が嫌いだった。
犬の糞の攻撃を受けた報復に、岩室の庭のチューリップを引き抜く。
その後、寿司屋に偽の注文、庭に除草剤を散布、洗濯物を汚すなど、エスカレートしていく。
両者の対決は陰湿極まりないものだが、お互いの心情はよく解り、面白い。
加えて、両者の職場の描写もいい。特に岩室の役所の人物描写は公務員の矮小さを上手く描けている。
岩室は冴えない公務員だったが、手原との戦いでふてぶてしくなり、上司に反抗するようになる。
手島もリストラに怯えるサラリーマンだったが、どんどん悪知恵が働くようになる。
二人の戦いは職場も巻き込み、最終決戦に突入する。
合間に挿入される殺伐としたニュース報道もスパイスになっている。
何となくだが、「ナニワ金融道」の情景を連想した。
この作家は知らなかったが、めっちゃ面白かった。別の作品も読もうと思う。

どろ (小学館文庫)

どろ (小学館文庫)