富士山

作者:田口ランディ|文春文庫
富士山が見える景色で、繰り広げられる4つの物語を収めた短編集。
「青い峰」はカルト教団から逃れ、コンビニでバイトする青年の話。
コンビニの静謐な空間を好み、真面目に働いているが、自殺志願の少女が接近。
少女を突き放すこともできないでいる。ある日コンビニに強盗が入り、、、
「樹海」は中学の卒業記念に樹海に冒険に訪れる3人の少年達の物語。
夜の樹海で今まで誰にも話したことの無い、自分だけの秘密を語り始める少年達。
夜が更け、できたてほやほやの自殺体を発見する。
ジャミラ」は都会の証券会社を止め、生まれ故郷の役所の環境課に勤める青年の話。
住民から苦情の出た、静かな住宅街にあるゴミ屋敷に住む老婆を訪ねるのが日課
いつしか老婆のことをジャミラとあだ名をつけ、交流が始まる。
「ひかりの子」は堕胎手術に悩む、産婦人科に勤める看護士の話。
見知らぬ人から、女性だけの富士登山に誘われる。
グループの中には癌に冒された女性もいて、看護士は助けながら登頂を目指す。

この本に出てくるのは、感じやすすぎる人たちばかりだ。そのために傷ついている。
些細なことなのに、思いつめる。でも、他人の痛みは理解している。
優しい人たちの話かといえばそうでもなく、登場人物はどこか壊れている。
3部作の「コンセント」「アンテナ」「モザイク」と共通した流れだ。
なぜ、こんな考え方をするのだろうと思う。生きにくいやん。
共感はできないけど、面白い。

富士山 (文春文庫)

富士山 (文春文庫)