梟首の島(上・下)

作者:坂東真砂子講談社
明治初期の自由民権運動に翻弄された母と二人の子供を描く大河小説。
この作者の最近の小説ではイマイチなのが多かったが、これは抜群に面白かった。
父親の急死で高知に出てきた岩神むめ、大洋、東吉の成長と、
ロンドンで切腹をした高知からの留学生の死の謎を追う、日本人貿易商の話が交互に進む。
むめと次男の東吉はいつしか自由民権運動に身を投じ、大洋は勉強に打ち込む。
ロンドンの貿易商の光明は、切腹した岩神のことを調べていると、別の日本人のことを知る。
東京で出会う東北地方の自由民権運動の活動家たちの悲惨な末路や、
岩神むめが息子を逃すために、横浜港で演説を行うシーンはよかった。
日本人の本質をえぐる言葉も、今は伝わらないことは何だか寂しく感じた。
この作者は悲劇を書くのが上手い。つかめそうで、どうにもならない夢。
あとに残された人たちの喪失感。「山姥」「桃色浄土」に匹敵する作品。

梟首の島〈上〉

梟首の島〈上〉