怪人対名探偵

作者:芦辺拓講談社文庫
タイトルでも連想できるように、江戸川乱歩へのオマージュ的作品。
推理小説好きの少年が誘拐され、殺人喜劇王と名乗る怪人が彼の一族を殺し始める。
少年の親族の少女から依頼を受けた弁護士の森江春策が事件の捜査を始めた。
2つの展開の中で、古臭い探偵小説が連載されているような不思議な記述が挿入される。
この3つのシナリオがミックスされ、話が進む。
「蠢く触手」「怪人物R・K」「大夜会」「時計塔の秘密」「大空の縊死体」
「人体溶解術」「探偵作家の推理」「拷問窟」「恐ろしき婚礼」など、
いかにも乱歩がつけそうな章のタイトルにはそそられた。
グロテスクな犯罪シーンもあり、ああ、乱歩だと思う。
最後には謎が鮮やかに解かれるのだが、何だかすっきりしない。
面白いことは面白いのだけど、必要以上に昔の推理小説の記述にこだわったのが、
読み終わってみると、ネックになっている。要するに表現が過剰なのだ。
でもこの作家は面白い小説を書く。「時の犯罪」「時の誘拐」は傑作だと思う。
大阪、特に市内のことを知っている人にはオススメ。

怪人対名探偵 (講談社文庫)

怪人対名探偵 (講談社文庫)