奇跡の人

作者:真保裕一新潮文庫
懸命に息子を看病し、先に逝く無念さのにじみ出た母の遺書から物語が始まる。
31歳の相馬克己は交通事故のため、8年間入院しているが、以前の記憶はない。
脳死状態から意識を取り戻し、新しい人生を歩み始めたが、小学生程度の知能。
母はすい臓がんでなくなり、退院後、一人で宮崎県にある自宅に戻り、
病院から紹介された印刷所で働き始める。周りにはやさしい人が多い。
日々の生活を精一杯送っているが、いつも自分が何者であるかを考えている。
ある日、自分が東京出身だということを知り、物語は大きく動き始める。
東京に出て、昔の仲間に出会い、彼女がいたことも判明するが、
8年という年月は長すぎた。
章の始めは母の看病日記で始まる構成で、物語は進む。
自分探しが主題のミステリーだが、ピュアな克己の存在がいい。
ホワイトアウト」も面白かったが、これも劣らない傑作だった。

奇跡の人 (新潮文庫)

奇跡の人 (新潮文庫)