廃用身

作者:久坂部羊幻冬舎文庫
神戸でデイケアクリニックを開業した漆原は、老人医療に心血を注いでいる。
脳梗塞などで麻痺し、回復の見込みのなくなった手足を廃用身という。
彼は廃用身を切断して、老人の回復を促進する画期的な治療法を思いつく。
手足を切断された老人たちは思いがけず、劇的な回復を遂げる。
だが、そのことをかぎつけたマスコミが、彼を悪魔の医師だと糾弾。
そんな中、手術を施した老人が殺人を犯す。
動かなくなったとはいえ、手足を切るかどうか決断を迫られる老人の恐怖。
マスコミが自分たちに都合のいい証言だけを集めて、記事を作り上げる手法。
編集者が漆原周辺の人を聞き込み、そのたびに変わる漆原の人物像。
この小説は前半が遺稿となった漆原の手記、後半は編集者の注釈という構成。
これは医者が書いた小説ということを差し引いても、とても面白かった。
老人医療の未来の暗さは医者として警鐘をならし、考えさせられた。

廃用身 (幻冬舎文庫)

廃用身 (幻冬舎文庫)