ひゃくはち

神奈川の強豪校の京浜高校の野球部員だった雅人は、新聞記者になった。
徳島への転勤辞令を受け、恋人の佐知子に「ついてきてほしい」と告げる。
すると、佐知子は付き合いはじめるずっと前の高校時代に出会っていたと言う。
戸惑う雅人は、過去の記憶をたどっていく。
一般受験で京浜高校野球部に入ったが、レベルの高さについていけない日々。
自宅から通えるのに、部員は全員、入寮が義務付けられていた。
回想シーンは、雅人が2年生の夏の県大会決勝から始まる。
雅人はベンチに入れず、スタンドから応援していた。
負けたことに悔しさはなく、先輩がいなくなり、自分たちの時代が始まると思う。
秋季大会に向け、ベンチ入りを目指す。
寮の仲間たちは、中学から野球で名をはせた選手ばかりだが、雅人は臆することない。
むしろ、喫煙、飲酒、合コンなど、積極的に彼らと参加していた。
その中に佐知子の面影を感じた女子校生はいなかった。
雅人は監督の叱られ役となり、相手チームの癖を見抜くことに長け、背番号をもらう。
秋季関東大会で優勝した京浜高校は、選抜の初戦で、大阪の強豪校と対戦する。
試合は劣勢で進むが、京浜は追いつき、延長戦に突入する。


野球に真剣に取り組むシーンと、普通の高校生のようにハメを外すシーン。
それから、雅人のチームメイトが夏の予選前におかした失態。
仲間を取るか、甲子園をめざすかと悩む雅人。


ありきたりの青春小説とは少し毛色が違うが、これはリアルでいい。
仲間と再会するシーンはすっとぼけていながらも、感動的だ。


ひゃくはち (集英社文庫)

ひゃくはち (集英社文庫)