ホームタウン

作者:小路幸也幻冬舎文庫

  • あらすじ

札幌の百貨店で働く行島柾人は、両親が互いに殺しあったという暗い過去を持っていた。
百貨店では調査部に所属し、20代にして部長の要職につくエリート社員だった。
そんな彼の元に、唯一の肉親の妹の木実から結婚するという手紙が届く。
素直に祝福した柾人だが、直後に木実と婚約者が失踪してしまう。
柾人は婚約者が務めていた旭川に向かうが、そこはかつて両親が殺しあった場所だった。
独力で調査を開始する柾人は、妹の婚約者が職場の不正を暴こうとしていたことを知る。
真相に近づくにつれ、地元の暴力団の姿が見え隠れし、柾人は窮地に陥る。

  • 感想

東京バンドワゴン」で家族のほのぼのとした交流を描いたが、本作は毛色が異なる。
後ろ暗い仕事に手を染め、若くして出世し、虚無的な雰囲気の柾人。
だが、冷酷な人間ではなく、ひたすら親が人殺しということで悩んでいる。
彼の後ろ盾となっているのは、カクさんと呼ばれる老人で、戦後暗躍したフィクサーだ。
また、旭川で中学時代に知り合ったヤクザの草場も、柾人をバックアップする。
容姿・頭脳にに恵まれ、体力にも優れた柾人は、ピンチも難なく乗り切ってしまう。
失踪人を探すストーリーは面白いが、柾人の造詣が少しスリルに欠けた。
サスペンスのようだが、少し違和感があった。だが結末でそれも解消された。
この作家は家族や仲間という絆を伝えたいのだろう。こういう流れも悪くないと思う。
好みではないが、読みやすい文章を書く作家のひとりだ。

ホームタウン (幻冬舎文庫)

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