甲子園裏事件史

別冊宝島
高校野球の後ろ暗い部分については以前から興味を持っていた。
週刊誌などで記事になるが、まとまった形で出版されるのは珍しい。
西武の裏金問題から明らかになった高校野球の特待生制度。
端を発した専大北上の選手とコーチの現在が紹介される。
選手は早稲田大学を退学し、信州の独立リーグでプレー、コーチは学校を解雇された。
高野連は特待生問題で学生憲章違反校400校近くを公表した。
だが、明らかにリストから漏れていた有力校がある。
これは高野連と癒着に近い関係を持っている高校で、監督たちの人脈などが明かされる。
この他、常葉菊川高校の監督と選手が女性新聞記者に行ったセクハラの顛末も生々しい。
佐賀北が優勝したことで、家族旅行キャンセルの補てんを受けようとしていた朝日新聞デスク。
沖縄代表の応援で、民族衣装を着ていた人たちを相応しくないとして締め出した高野連
夏の甲子園の優勝投手のその後のリストもあるが、近年大学を中退している選手が目立つ。
このほか自殺した監督や、不祥事を告発した教師が自殺に追い込まれる事例も取り上げている。
高校野球が健全なものとして見ている人はほとんどいないだろう。
プロに行く選手を多数抱える名門校や、そこに選手を送り込む関係者はもはや利権と化している。
こういう本を読むと、あらためて生々しく感じる。
別に球児たちが金を生む存在だと割り切ってしまえばいいのだが、それを阻むのが高野連だ。
教育の一環というお題目が白々しく思えてならない。彼らもまた利権のひとつだ。

甲子園 裏事件史 (別冊宝島―ノンフィクション (1551))

甲子園 裏事件史 (別冊宝島―ノンフィクション (1551))