非道、行ずべからず

作者:松井今朝子集英社文庫
江戸時代、文化六年の元旦に起きた火事で、芝居小屋の中村座が焼け落ちた。
その焼け跡から行李に入った老人の絞殺死体が見つかる。
町奉行所同心の笹岡は、見習いの理一朗を従え、下手人を探し始める。
劇場主の十一代目中村勘三郎、名女形の荻野沢之丞をはじめ、小屋には妖しい人物で溢れていた。
荻野沢之丞には二人の息子がおり、跡目を激しく争っていた。
また、劇場主の勘三郎を蔑ろにする、楽屋頭取と帳元
脛に傷を持つ金主(スポンサー)と有能だが本音が見えない劇作家。
一癖もふた癖もある人物たちは、すべて疑わしく思える。
笹岡と理一朗は、桟敷番頭の右平次と売れない女形の沢蔵を手先にするが、第二、第三の殺人が発生する。
江戸時代の歌舞伎小屋を舞台にしたミステリーだが、非常によくできた話だった。
おまけに歌舞伎の舞台や稽古の描写もスリリングで、文章も構成も上手い作家だと思った。
この作品は直木賞候補となり、受賞は逃したが、今年「吉原手引草」で受賞した。

非道、行ずべからず (集英社文庫)

非道、行ずべからず (集英社文庫)