硝子のハンマー

作者:貴志祐介|角川文庫
日曜日の昼下がり、株式上場を控えた介護会社の社長が何者かに殺害された。
社長が死んだ部屋のセキュリティは堅牢で、何者かが出入した形跡はなかった。
唯一、近づくことのできた専務が逮捕されるが、犯行を強く否認する。
弁護士の青砥純子は、専務の無実を信じ、防犯コンサルタントの榎本を訪ねる。
榎本は鍵を簡単に開け、セキュリティも無効化できる、犯罪者のような知識を持っていた。
犯人はどこから侵入し、どうやって社長を殺害し、どこから逃亡したのか?
完全な密室を前に、二人は一つずつ可能性を探っていく。
ここまでが第一部で、第二部は犯人が完全犯罪を企てるまでの過程が描かれる。
高校生の章の父親は、祖父の遺産を受け継ぎ、先物取引に手を出し、あっという間に財産を失ってしまう。
父は行方がわからなくなり、家には闇金融の取立てがやってくる。
父の肩代わりを強要された章は、町から逃亡することを決意する。
闇金融の取立てを刺し、東京に流れ着いた章だが、追っ手に怯え、職や住居を頻繁に変える。
ある日、ビルの硝子拭きの仕事をしていると、数百個のダイヤモンドを隠している社長を目撃する。
逃げ隠れする生活から抜け出すため、章はダイヤモンドを奪うことを決意する。
密室の謎を解くミステリーだが、第二部で犯人は誰だかわかってしまう。
犯人探しという主題からは外れてしまうが、章が完全犯罪を実行するまでのスリルは読み応えがあった。
特に社長殺害の実行シーンは章の緊張が生々しく伝わってくる。タイトルが重要なヒントだ。

硝子のハンマー (角川文庫)

硝子のハンマー (角川文庫)