交渉人

作者:五十嵐貴久幻冬舎文庫
コンビニ強盗に入った3人組が、警察に追われ、病院に立てこもる。
患者、医師、看護師など50人が人質に取られることになった。
警察は、交渉のプロである石田警視正に指揮を執らせ、犯人側と交渉を始める。
石田は、部下達に講義をするように、犯人達と電話でやり取りをする。
少しずつ人質が解放され始め、犯人逮捕までのシミュレーションは完璧に思えた。
だが、犯人は警察の追尾を振り切り、人質が殺害される。
犯人を追い詰める心理劇から一変するが、意外なところから真犯人が見つかる。
少し早すぎる犯人の解明だったが、作者はその後のストーリーをキチンと作っていた。
終盤の犯人の告白が新たなストーリーを作っているようで、非常に面白かった。
この作者は1作ごとに、まったく異なる作品を書いている。
デビュー作の「リカ」はストーカーの女性がモンスターに変貌するホラーだった。
これが「黒い家」を髣髴させるような、傑作だった。
次に読んだ「1985年の奇跡」はホモのエースを盛り立てる高校野球を舞台にした青春小説。
安政五年の大脱走」は大老に目をつけられた姫を、弱小藩が脱走させる活劇。
異なるジャンルで面白い作品を書くのは驚きだし、読んで損のない作家だと思う。