余命1年のスタリオン(上・下)

作者:石田衣良|文春文庫

文庫本裏書
上巻
芸能界への登竜門「スタリオンボーイグランプリ」でデビューし、“種馬王子”の異名を持つ小早川当馬。
俳優として着実にキャリアを積み、プライベートも好調だったが、突如、がんの宣告を受ける。
余命は一年―。
残り少ない時間で、自分は世界に何を残せるだろうか。
俳優として、一人の男として、当馬の最後の挑戦が始まる。
下巻
当馬は、最後の一年を映画に懸けた。
監督の溝畑英治、先輩女優の都留寿美子らを巻き込みつつ、病身を押して撮影に打ち込む。
そして、思いもかけず生まれた、新しい愛。
「わたしは、当馬さんの赤ちゃん、産んでもいいですよ」。
その真っ直ぐな視線に、すでに人生の終わりを見定めた当馬はどう答えるのか―。


35歳の俳優当馬は順調に活動を進めていたが、止まらない咳が気になり、病院に行く。
すると、ほぼ治らないがんで、余命宣告を受ける。
彼は撮影に入る映画を最後の作品と決め、自身のがんを公表する。
さらに彼の子供を産んでもいいというマネージャが現れる。
死に向かって、生きた証を残そうとする当馬。
淡々とユーモアを含み、石田衣良らしい作品だ。
でも、35歳で癌で死ぬ人間が、すべてをやり遂げる境遇に恵まれることはない。
現実感のない童話のようだった。悪くないけど。