タチコギ

作者:三羽省吾幻冬舎

  • あらすじ

祖母の死去に伴い、柿崎信郎は小学4年生の息子の智郎を連れ、故郷に戻る。
柿崎が智郎と同じ年だった1978年、「ノブ」と呼ばれていたころ、故郷は鉱山でにぎわっていた。
ノブの父親は鉱山で働き、それほど裕福ではないが、仲のいい友人たちがいた。
また、周りには傷痍軍人の「軍曹」や学生運動崩れの「ゲン」という20過ぎの若者がいた。
ノブと友人たちは悪戯をしては、担任にぶん殴られ、それでも懲りずに馬鹿な遊びを繰り返していた。
だが、そんなノブの生活も、鉱山が外資企業に買い取られて、変化が訪れる。
経営者のアメリカ人の大柄な少年が転校生としてやってきて、ノブたちは非主流派になってしまう。
ノブと仲間は、自分たちのプライドと地位を取り戻すために、野球で勝負を臨む。

  • 感想

不登校になった息子を立ち直らせるために、かつての故郷に訪れるが、解決策を持たない大人になったノブ。
故郷は寂れてしまい、実家に息苦しさを覚えた信郎は近くの居酒屋に入る。
そこで、昔の思い出を話し、智郎が不登校になった理由を話しつつ、ストーリーが進む。
でも、聞き手はかつての仲間たちで、最後に明らかになるが、その意外さがよかった。
昭和の時代にも格差はあった。でも、格差の中でもコミュニケーションは存在していた。
昔が良かったとは思わないけど、郷愁を強く換気させる作品で、雰囲気はいい。
ただ、ノブの仲間のウネリン達のその後のエピソードがあればもっとよかったと思う。

タチコギ

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