ひなた

作者:吉田修一光文社文庫
東京に住む4人の男女が見つめる春夏秋冬を描いた小説。
新堂レイは海外ブランドの大手に就職し、いきなり広報の仕事に抜擢される。
先輩にしごかれながら、仕事に精いっぱい慣れようとしていた。
レイの恋人の大学生の尚純は就職活動もせずに、叔父の飲食店でバイトを続けている。
尚純は両親と実家暮らしだが、兄夫婦が同居することに戸惑っていた。
尚純の兄の浩一は、地元の金融機関に勤め、趣味で劇団に参加している。
雑誌の編集者の桂子と結婚しているが、同性愛の気があり、同級生の男に接近している。
一方、浩一の妻の桂子も中年の落ちぶれたカメラマンと不倫関係を継続していた。
大学生と新入社員のすれ違いカップルと、W不倫の夫婦という危うい関係を描いている。
尚純には出生の秘密もあり、少し謎めいた雰囲気もあるが、淡々と話は進む。
4人とも肩の力を抜いた生き方をしているのはいいが、もう少し山場があった方がよかった。
平凡な話の中に雰囲気を作るのが上手い作家だが、最近は出来の幅が大きくなっている。
これはどちらかといえばハズレかなと思う。

ひなた (光文社文庫)

ひなた (光文社文庫)