十八の夏

作者:光原百合双葉社文庫
ありふれた日常で起きる変化を取り上げた4つのミステリーが収録されている。
「十八の夏」は浪人が決まった主人公が近くで会った年上の女性に出会う話。
彼女にひかれた主人公は、勉強のためと親を説得し、彼女と同じアパートに下宿する。
時折、彼女が見せる影の部分が気になりつつ、接近を試みる。
「ささやかな奇跡」は妻を亡くし、8歳の息子とともに大阪に移り住んだ35歳の男の話。
書店に勤める彼は、自宅近くにある書店を一人で切り盛りする女性に興味を持つ。
でも、彼女は父親が分からない子供を妊娠した揚句、死産し、付近の人は敬遠していた。
めげずに彼女にアプローチをするが、身内から反対の声が上がる。
「兄貴の純情」は役者の卵である青年が、弟の恩師の妻に横恋慕する話。
「イノセント・デイズ」は両親の不倫に振り回され、殺害を試みる少年と少女の話。
この話が一番ミステリーらしかったが、後味は悪い。
文章は上手いので、読んでいて退屈はしなかったけど、話がそれほど面白くなかったのは残念。
「十八の夏」や「ささやかな奇跡」は手の届きそうにない相手との恋愛話の展開は面白かったが。
初めて読む作家の本だったが、他の作品では期待できるかもしれない。

十八の夏 (双葉文庫)

十八の夏 (双葉文庫)