夜にその名を呼べば

作者:佐々木譲|ハヤカワ文庫
1986年、まだドイツが東西に分裂していた時代。共産諸国に対する輸出規制があった。
欧亜交易に勤める神崎哲夫は、親会社のココム違反もみ消しののスケープゴートにされる。
上司が撲殺され、神崎は何者かに銃撃されるが、現地のドイツ人に助けられ、東ドイツに逃れる。
日本では神崎を共産国家のスパイと断定し、神崎の妻は電車に身を投げる。
それから5年後、共産国家に潜入していた神崎から当時の関係者に手紙が届く。
「小樽港に来てほしい。真相を話します」
神崎の母親、上司の娘、神崎を嵌めた親会社の役員、憶測で記事を書いたジャーナリスト。
そして、神崎をマークし続ける公安の刑事たち。
小樽港は警察により封鎖され、厳戒態勢が敷かれるが、銃を携帯した不審な外国人が逮捕される。
これがきっかけなのか、関係者が次々と殺害されていく。神崎はどこに潜んでいるのか?
神崎の逃亡劇や、手紙が届いた関係者の描写は面白かった。
でも、スリリングな展開の割に、犯人の設定にはかなり無理があり、結末はかなり興ざめだった。
残念な作品だが、過去の冷戦をベースにした国内ミステリーは珍しい。

夜にその名を呼べば (ハヤカワ文庫JA)

夜にその名を呼べば (ハヤカワ文庫JA)