ガラス張りの誘拐

作者:歌野晶午|角川文庫
都内で若い女性が誘拐され、殺害される事件が連続して発生する。
見つかった遺体はそれぞれ、遺体の一部が切り取られていたので、同一犯だと思われた。
警察の捜査を尻目に、犯人は新たな犯行声明を新聞社に送り付ける。
該当の女性は数日前から行方不明になっていた。犯行声明の中ではすでに殺害の告白まであった。
だが、ようやく見つけた犯人は「犯行声明は自分ではない」という遺書を残し、自殺する。
行方不明になっていた女性も無事発見されるが、誰が犯行声明が送ったのかという謎が残った。
その直後、捜査に当たっていた佐原刑事の娘が誘拐される。
犯人からは警察に届けてもかまわないから、一億円を用意しろという要求が届く。
さらに犯人は大勢の人がいる浅草に、透明のビニールに一億円を入れて、佐原に運ぶように命じる。
犯人はどうやって身代金を奪取し、人質をどうやって解放するのだろうか。
第3章は過去に戻り、若い風俗嬢が不思議な予言をする大学教授と出会い、家族の死を宣告される。
まったく異なる話に移るのだが、最後に犯人の姿が現れる。
構成は悪くないのだが、第3章の最初で犯人が分かってしまった。これは作家のミスだ。
また、エリザベート・バートリや、小平義雄の記述も陳腐で、かなり余計なものに思えた。
ほぼ20年前の作品だが、傑作と言われるミステリー以外には旬があるのだと感じた。
それでも現在出版されている下らないミステリー作品に比べると、かなりマシだ。

ガラス張りの誘拐 (角川文庫)

ガラス張りの誘拐 (角川文庫)