エピタフ

作者:あぜごのまん|角川ホラー文庫
デビュー2作目。中篇が3つ収録されている。
「エピタフ」は大学の卒論を書くために、故郷の高知に訪れた主人公が見る悪夢。
実家は既に無くなっているので、隣家のクロちゃんの家に滞在する。
兄を交通事故で亡くしたクロちゃんの家は、人気もなく、怪しげな雰囲気が漂っている。
鰻にまつわる不気味な伝承を調べるうちに、現実との境がなくなり、錯乱する主人公。
無意味のように思えた、冒頭の姑と嫁の会話が結びついたときに現実に戻る。
寂れた田舎の伝承と、廃屋に蠢く何かのコントラストが話を盛り上げている。
丁寧に描写すれば、傑作になったと思うので、少し残念。
猿の手」は同名の海外の怪談のパロディのようだが、頭のいかれたOLが猿を虐待する話。
「憑」は生活保護を受けている男が、教祖になる話。
ケースワーカーの中年の女性に、色情を催すところや、完全に壊れてしまうところは気持ち悪い。
設定は面白いが、福澤徹三の怪談に少し似ていて、現実の恐怖が足りないという印象。
とはいえ、現実と狂気の間の描写は上手い。いずれ傑作を書くような気がする。

エピタフ (角川ホラー文庫)

エピタフ (角川ホラー文庫)

霊柩車No.4

作者:松岡圭祐|角川文庫
死体を見て、死因の欺瞞を暴く、霊柩車の運転手「怜座」が活躍する異色エンターテインメント。
人を突き放すような言動で、冷たい印象を与えるが、実は人一倍気配りがある。
遺族に群がる詐欺のような新興宗教の輩を撃退し、騙しのテクニックを暴露する。
また、葬儀に関する薀蓄も話の中で、何度も披露する。
卓越した運転テクニックを持つ「怜座」だが、交通事故で妻を失った悲しい過去を持つ。
そんな彼が、女性キャスターと共に、葬儀場と道路公団の癒着を暴くストーリー。
何故、そんな方向に話しが進む?荒唐無稽な話だが、読んでいるうちは飽きない。
でも、この作家は無駄な展開があるので、あまり好きではない。
この作品も前半の部分は何だったのと思う。
最後にこじつけのように話を結び付けているけど。
面白いのだけど、好きになれない作家は他に、楡周平西村健がいる。

霊柩車No.4 (角川文庫)

霊柩車No.4 (角川文庫)